可用性を理解する

朝9時、配送センターで出荷システムが止まりました。昨日のバックアップはあるものの、午前中の注文をどう扱うか、何時までに再開するかが決まっていません。この教材では停止前の備えから復旧後の確認までを時間の流れで考えます。

この単元で学ぶこと

  • 必要な利用者・時間・機能から可用性を説明できる
  • 冗長化とバックアップの役割を区別できる
  • 復旧時間と失ってよいデータの時点を区別して検討できる

本文解説

まず業務上の必要を決める 可用性は、利用を認められた人やシステムが必要なときに利用できるという観点です。配送センターなら、出荷締切までに注文を確認し伝票を作る必要があります。画面の一部が開くだけでは十分とは限りません。誰が、いつ、どの機能を必要とし、止まるとどの業務が困るかを明らかにします。

停止の原因は攻撃だけではない 機器故障、停電、通信障害、設定ミス、過大なアクセスなどで利用不能になります。重要なのは原因の名称だけでなく、影響範囲です。一台の端末だけなら承認された代替端末で継続できる場合がありますが、共有データベースが止まれば多くの端末に影響します。画面や端末が正常でも、依存する認証・ネットワーク・電源などが止まると使えません。

冗長化は代わりを用意する 冗長化は、一部が故障しても別の構成要素で継続できるよう、機器や経路などを複数用意する考え方です。ただし二台のサーバーが同じ故障した電源に依存するなら、二台とも止まり得ます。台数だけでなく、共通して依存する箇所と切替方法を調べます。予備があっても、切替が動作しないなら期待した効果は得られません。

バックアップは過去の状態へ戻す備え バックアップはデータの複製を保存し、誤削除や障害などの後に復元するための備えです。現在の状態を二台へ同時に反映するだけでは、誤削除も両方へ伝わることがあります。過去の版を保持するバックアップとは役割を区別します。バックアップの保存先にもアクセス制限が必要で、障害や攻撃の影響を一緒に受けないか確認します。

いつまでに戻すかとどの時点へ戻すか 復旧時間目標(RTO)は、停止後どれくらいの時間で復旧することを目指すかです。復旧時点目標(RPO)は、どの時点までのデータを復旧できることを目指すかで、許容するデータ損失の範囲に関係します。例えば9時に停止し、11時までの再開を目標にする話と、8時30分までの注文を戻したいという話は別です。目標は保証された実績ではありません。

数値で分けてみる 9時に停止し、10時30分に復旧したなら停止から復旧まで1時間30分です。復旧データが8時40分時点で、以後の注文を別記録から戻せないなら、停止直前までの20分間の注文が復旧対象から欠けるおそれがあります。復旧が速くてもデータが古い場合があり、最新データが残っていても復旧に時間がかかる場合があります。

復元試験と代替手段 バックアップの取得成功だけでなく、実際に復元し、必要な業務機能が動くこと、内容が妥当であること、所要時間を確認します。試験は隔離した環境で行い、本番の利用者データを不用意に壊さないようにします。停止中の紙伝票などの代替手段を使うなら、後でシステムへ戻す際の重複や入力漏れを防ぐ手順も必要です。

復旧後も終わりではない サービスが開けるようになった後は、処理待ちや失敗した注文がないか、代替手段の記録と矛盾しないかを確認します。原因と影響、実際の停止時間を整理し、目標との差から改善します。可用性を高めるためにアクセス制限を全て外すのは適切ではありません。正当な利用を回復しながら機密性と完全性も保ちます。

図解

停止時間と復旧データの時点は別の軸
例では保存時点8:40、停止9:00、復旧10:30。復旧の速さとデータの新しさを混同しない。

重要ポイント

  • 必要な利用者・時間・機能を基準に可用性を判断する。
  • 冗長化は共通原因と切替方法まで確認する。
  • 冗長化・同期と、過去の版へ戻せるバックアップは同じではない。
  • RTOは復旧までの時間、RPOは復旧するデータの時点に着目する。
  • 復旧後は業務再開とデータの欠落・重複も確認する。

間違えやすい点

  • サーバー台数だけで障害に強いと断定しない。
  • バックアップ取得成功を復元成功と同一視しない。
  • 復旧目標と実際に達成した結果を区別する。

用語解説

冗長化
構成要素や経路などを複数用意し、一部の故障時も継続できるようにすること。
バックアップ
復元に備えてデータの複製を保持すること。
RTO
復旧時間目標。停止後にどれくらいの時間で復旧することを目指すか。
RPO
復旧時点目標。復旧可能とするデータの時点についての目標。
共通原因の障害
複数の構成要素が依存する電源や経路などの問題で、同時に影響を受ける障害。

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参考資料

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