機密性・完全性・可用性の違いと使い分け

「暗号化は機密性、バックアップは可用性」とだけ覚えると、暗号鍵を失って読めなくなった場合や、古いバックアップで正しい更新を消した場合に迷います。この教材では小さな比較表を頭の中に作り、事実・目的・残るリスクを分けて判断します。

この単元で学ぶこと

  • 同じ事故の事実を三要素へ分けて整理できる
  • 対策の名称ではなく目的と条件から効く範囲を説明できる
  • トレードオフがある場面で必要な業務と保護を両立させて考えられる

本文解説

まず事実を三列へ分ける 報告に「名簿が外へ漏れた」「金額を誤更新した」「システムが止まった」とあれば、それぞれ開示範囲、内容の正確さ、必要時の利用という列へ整理します。機密性・完全性・可用性は事故の名前ではなく、守りたい性質です。一つの報告に複数の事実がある場合は、列を一つに限定しません。

同じ名簿で条件を一つずつ変える 名簿を許可外の人が読むだけなら機密性に、内容を無断で書き換えれば完全性に、担当者が必要なときに使えなければ可用性に注目します。無断変更で正しい住所が失われても、ファイルが開けるだけで「完全性は正常」とはいえません。逆に、閲覧できなくても内容の誤りや漏えいが起きたと自動的に決まるわけではありません。

暗号化という名前だけでは決めない 端末紛失時に内容を第三者に読ませない目的なら、暗号化は機密性に主眼があります。一方、復号鍵を失い正当な利用者も読めなくなれば、可用性の問題になります。暗号化したデータの入力内容が最初から誤っていたなら、暗号化によって正しい内容には変わりません。対策名ではなく、どの状態を改善・悪化させたかを読みます。

バックアップの三つの問い バックアップは復旧に役立ちますが、その複製を誰が読めるか、保存内容は正しいか、必要時間内に戻せるかを別々に確認します。複製の無制限公開は機密性、誤った内容や欠落の保存は完全性、復元不能や大幅な遅延は可用性に関わります。一つの対策に三つの視点を当てると、対策したつもりの見落としを減らせます。

アクセス権限も操作を区別する 閲覧者を限定することは主に開示範囲、更新者を限定することは主に不適切な変更を抑える目的になります。しかし必要な担当者まで締め出すと業務利用に支障が出ます。「制限を厳しくするほど無条件によい」とはせず、正当な利用に必要な操作と時間を残す設計にします。 比較するときは「A:閲覧者の限定」「B:更新者の限定」「C:別経路での復旧」のように条件を並べます。この例の主目的は順に機密性・完全性・可用性です。ただしAで担当者まで閉め出せば可用性への副作用が生まれるため、名前だけの分類では終えません。

優先順位と切捨てを混同しない 災害時の避難情報では迅速な提供が非常に重要ですが、誤った場所や経路を案内すれば危険です。公表を急ぐことは内容確認を不要にしません。機密資料を扱う業務でも、鍵や権限を厳しくした結果、必要な時刻に承認担当が確認できなければ別の支障が生じます。重要度は業務によって異なり、低い項目を必ずゼロにしてよいわけではありません。 例えば権限のある担当者が10分以内に閲覧する要件なら、2分で読めても権限外に公開する案や、権限外は拒めても担当者に30分かかる案は、どちらも全条件を満たしません。速さと開示範囲を同時に比較します。

確認済みと疑いを区別する 「外部へ送信された形跡がある」という報告と「第三者が実際に読んだと確認した」という報告では、確認の段階が異なります。また「停止したが漏えいは未調査」を「漏えいはなかった」と書き換えてはいけません。分類するときは、確認された被害、考えられる追加影響、まだ調べていない事項を分けて記録します。

比較の小演習 ある公開料金表は正しい内容で閲覧できますが、職員限定の連絡先ページが外部へ公開されていました。料金表の正常さでサイト全体の安全を判断せず、連絡先の開示範囲を見直します。次に、その連絡先を担当者も読めない設定にすると、開示の抑制と引き換えに必要な利用を妨げます。対象情報と利用者を具体的にして、残すべきアクセスと止めるべきアクセスを分けましょう。

図解

対策名からではなく条件から判断する
矢印はこの例での主な観点。対策には他の効果や副作用もあるため、対象と目的を確認する。

重要ポイント

  • 事実を開示範囲・正確さと完全さ・必要時の利用の三列で整理する。
  • 一つの事故や対策が複数要素に関係することがある。
  • 閲覧制限と更新制限の主目的を分ける。
  • 対策の効果を目的・条件・副作用から評価する。
  • 未調査を被害なしに読み替えない。

間違えやすい点

  • 事故名や対策名から必ず一つの要素に固定しない。
  • 重要な要素を優先することと他の要素を無視することを混同しない。
  • 一ページ正常だからサイト全体も正常と一般化しない。

用語解説

トレードオフ
一方を改善する選択が別の面へ不利益を与える関係。業務上の条件を踏まえて調整する。
確認済みの影響
調査等で発生を確かめた被害や支障。未確認の可能性とは区別する。
対策の主目的
その対策を今回の場面で導入する中心的な狙い。同じ対策でも場面で異なる。
正当な利用
業務上認められた利用者・目的・操作範囲で情報やシステムを利用すること。

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参考資料

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