バックアップと障害回復の試験問題への適用
コピーがあるだけでは、必要な時点に、許された時間内で戻せるとは限りません。取得方式、保存期間、権限、復元時間を具体的な障害シナリオに当てはめ、復旧計画の不足を見つけます。
この単元で学ぶこと
- フル・増分・差分の保存対象と復元順序を説明する
- RPOとRTOを区別し時間で評価する
- 誤削除や攻撃から復旧用コピーを守る
- 復元訓練に必要な確認項目を挙げる
本文解説
方式ごとに必要な世代を選ぶ 日曜フルを基準に月・火・水曜を取得したとします。増分が前回バックアップ以降だけなら水曜復元にはフルと月・火・水曜増分が必要です。差分が日曜フル以降の累積ならフルと水曜差分を使います。製品固有の合成フルなどを前提にせず、問題に書かれた方式の定義で解きます。
途中世代の欠落 増分系列の月曜分にしか入っていない変更は、火曜と水曜をそろえても取り戻せません。一方、直近フルからの累積差分なら最新差分に月曜以降の変更が含まれます。バックアップを取得した日数だけでなく、どの期間の変更が各世代に入っているかを時系列へ書きます。
復旧時点の計算 10時20分の障害に対して10時00分まで戻せれば、失う可能性がある時間幅は20分。RPO15分という要件には5分届きません。取得頻度を上げる、取引ログを保存するなどで復元可能な点を増やします。復元先を高速化しても、記録されていない変更は復活しません。
復旧時間の計算 判断20分、準備40分、復元70分、業務確認30分を順に行えば計160分。RTO120分なら40分の短縮が必要です。並行できる作業がある場合は依存関係を考えますが、根拠なく全作業を同時開始とみなしてはいけません。
転送時間は全体の一部分 120GBを毎秒100MBで転送し、1GB=1000MBなら120000÷100=1200秒、20分です。実際には媒体の準備、復号、インデックス再作成、通信、認証、業務確認などが必要です。転送だけの理論値からRTO達成を断定せず、訓練で全体を測ります。
遅れて見つかる誤更新 一週間前の誤更新が今日判明しても、保存が直近3日だけなら誤更新前へ戻れないおそれがあります。検知までの遅れも考えて保持期間を決めます。長く残せば容量や機密管理の負担も増えるため、業務・規程上の要件と合わせて設計します。
共通原因を断つ 本番管理者の権限でバックアップも削除できれば、侵害時に一緒に失います。独立した権限、オフライン保管、変更不能な保存などを条件に合わせて組み合わせます。別の棚に置くだけでは建物火災への分離にならず、別アカウントという名前だけでも実権限の分離は保証されません。
訓練結果から計画を直す 隔離した復元先で、データ、鍵、認証、外部接続、担当者の連絡などを確認します。顧客情報を復元する試験環境にもアクセス制御と保管期限が必要です。戻せる時点と総所要時間を記録し、目標との差や手順の欠落を次の改善へ反映します。
図解
重要ポイント
- 増分は前回以後、差分は直近フル以後という定義で区別する。
- RPOは復旧時点、RTOは再開までの時間。
- 同期だけでは誤削除前へ戻れない場合がある。
- 取得成功に加えて復元と業務再開を検証する。
間違えやすい点
- コピー数だけで保護の独立性を判断しない。
- 転送時間だけでRTO達成を断定しない。
- 暗号化したコピーの鍵を同時に失わない。
用語解説
- フルバックアップ
- 定めた対象データの全体を保存する方式。
- 増分バックアップ
- ここでは直前のバックアップからの変更を保存する方式。基本的な復元にはフルと必要な増分の系列を使う。
- 差分バックアップ
- ここでは直近のフルからの変更を累積保存する方式。基本的な復元にはフルと目的時点の差分を使う。
- RPO
- 復旧時点の目標。障害によりどれだけ過去の状態まで戻ることを許容するかを時間で表す。
- RTO
- 障害後、業務やサービスを再開するまでの目標時間。
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参考資料
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