ROI・RIの全体像
利益額が大きい事業部が、投資した資本を最も効率よく使っているとは限りません。利益と投資額の比率を表すROIと、資本利用の負担を金額で差し引くRIを比較します。指標が管理者の投資判断にどのような影響を与えるかまで考えます。
この単元で学ぶこと
- ROIとRIを同じ利益・投資基準で計算できる
- ROIを利益率と回転率に分解できる
- 事業部と全社の判断が食い違う事例を説明できる
本文解説
投資センターの業績評価 事業部長が利益だけでなく設備や運転資本への投資にも責任を負う場合、その部門を投資センターとして評価します。利益100万円を得るための投資が500万円なのか2,000万円なのかで資本効率は違います。利益だけを比較すると、規模の大きさを効率の良さと取り違えることがあります。
ROIの計算 ROI(投資利益率)=利益÷投資額です。利益120万円、投資額1,000万円なら12%です。利益は年間額、投資額は期首・期末平均など問題の指定を使います。管理可能利益と事業部利益、総資産と純営業資産など、定義が違う数値を無意識に混ぜて比較してはいけません。
売上高で分解する ROI=(利益÷売上高)×(売上高÷投資額)。前半が売上高利益率、後半が投資回転率です。売上高2,000万円、利益120万円、投資額1,000万円なら、利益率6%×回転率2回=12%。値上げや原価改善は利益率に、遊休資産や在庫の圧縮は回転率に影響しますが、品質や供給力への影響も考えます。
RIの計算 RI(残余利益)=利益-投資額×要求利益率です。投資額1,000万円に要求利益率10%なら資本負担額100万円、利益120万円から差し引くRIは20万円です。要求利益率は、資本を利用することに対して要求する収益の基準です。この内部評価上の控除が、そのまま外部会計での支払利息仕訳になるわけではありません。
追加投資で起こる食い違い 既存事業の利益200万円、投資額1,000万円ならROI20%。追加案は投資500万円、利益75万円なので15%です。全社の要求利益率が10%なら追加案は基準を超えます。しかし採用後の事業部ROIは(200+75)÷(1,000+500)=18.33…%となり、従来20%を下回ります。ROIだけで評価される管理者は有利な案を断る誘因を持ちます。
同じ案をRIで見る 採用前RIは200-1,000×10%=100万円、採用後は275-1,500×10%=125万円。追加によるRI増加は25万円で、追加案の75-500×10%と一致します。同じ要求利益率と同じ測定基準なら、要求利益率を超える追加投資はRIを増やすので、この例の判断不一致を抑えられます。
指標の限界 RIは金額なので事業部規模の影響を受け、異なる規模の単純順位付けには注意が必要です。ROIは比率でも、設備の老朽化により帳簿投資額が小さい部門が有利に見えることがあります。また短期の利益を増やすために研究開発や保守を過度に削ると長期価値を損ねます。どちらも単独で事業価値の全てを表す指標ではありません。
練習と判断の範囲 利益90万円、平均投資額600万円、要求利益率12%ならROI15%、RI=90-72=18万円です。投資額300万円で追加利益30万円の案は10%のため、RIを6万円減らします。ここでは一年の会計利益で評価しており、複数年の投資採否では資金の時点を考慮したNPVなども検討します。
図解
重要ポイント
- ROI=利益÷投資額。
- ROI=売上高利益率×投資回転率。
- RI=利益-投資額×要求利益率。
- 追加ROIが既存ROI未満でも要求利益率を超える場合がある。
間違えやすい点
- ROIの単純平均で統合ROIを求めない。
- RIを比率と扱わない。
- 資本負担額を自動的に外部会計の支払利息にしない。
用語解説
- 投資センター
- 利益と投資額の管理責任を負う責任単位。
- ROI
- 利益を投資額で割った投資利益率。
- RI
- 利益から要求利益率に基づく資本負担額を引いた残余利益。
- 投資回転率
- 売上高を投資額で割った、投資に対する売上の倍率。
参考資料
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