日商簿記2級は、商業簿記と工業簿記を90分で処理し、70%以上を取る試験です。連結・決算などの商業簿記と、原価の流れを追う工業簿記を並行して仕上げることが重要です。
運営:資格合格.web 運営/更新日 2026-10-05/読了目安 22分
日商簿記2級 攻略ガイド
日商簿記2級は、3級の延長だけで突破できる試験ではありません。
商業簿記では連結会計、税効果会計、外貨建取引、固定資産、株主資本など扱う論点が広がり、工業簿記では材料費・労務費・経費、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算などを使って製造原価を追う必要があります。
さらに試験時間は90分です。商業簿記の重い問題に時間を使いすぎると、比較的安定して得点しやすい工業簿記まで崩れます。
このガイドでは、簿記2級を「商業簿記を全部解き切る試験」ではなく、商業簿記と工業簿記から70点以上を90分で回収する試験として攻略します。
このページの仕訳例・計算例は、学習方法を説明するために資格合格.webが独自に作成したものです。実際の日商簿記2級の非公開試験問題を転載・再現したものではありません。
最初に知っておきたい「簿記2級で失点しやすい4パターン」
1. 3級の仕訳力だけで商業簿記を押し切ろうとする
2級では、単純な仕訳だけでなく、複数の処理がつながる問題が増えます。
一つの仕訳を知っているだけではなく、その処理が決算書のどこへつながるかまで理解する必要があります。
2. 工業簿記を後回しにする
工業簿記は初見では別の科目に見えますが、計算手順が整理できれば得点源にしやすい分野です。
商業簿記を完全に終えてから工業簿記へ進むのではなく、早い段階から並行します。
3. 公式だけ覚えて原価の流れを見ない
原価計算では、公式を暗記しても「どの数字をどこへ入れるか」が分からなければ解けません。
材料・仕掛品・完成品へ原価がどう流れるかを先に理解します。
4. 重い商業簿記で時間を失う
連結や決算整理で一つの数字が合わないと、最初からやり直したくなります。
しかし90分しかありません。
取れる問題から先に得点し、重い問題は後から戻る判断が重要です。
商業簿記と工業簿記は「別々に仕上げて最後に合流」させる
商業簿記と工業簿記では、考え方がかなり違います。
商業簿記では、取引・決算整理・財務諸表の流れを追います。
工業簿記では、製造活動の中で原価がどこへ集まり、どう配賦され、製品原価になるかを追います。
商業簿記と工業簿記の二本立て
日商簿記2級の商業簿記と工業簿記の二本立て。商業簿記の取引と決算、工業簿記の原価の流れと計算を並行して学び、最後に90分演習で合流させる。
- 商業簿記の土台取引を仕訳し、決算整理から損益計算書・貸借対照表へつなぐ。
- 商業簿記の2級論点固定資産・税効果・外貨建取引・連結会計を、処理の目的から整理する。
- 工業簿記の土台材料費・労務費・経費が仕掛品、製品、売上原価へ移る流れを追う。
- 工業簿記の計算個別・総合・標準・直接原価計算を学び、最後に商業簿記と90分で通す。
最初から混ぜて覚えるより、
- 商業簿記の日
- 工業簿記の日
- 両方を90分で解く日
を分ける方が整理しやすくなります。
商業簿記は「仕訳→決算書」のつながりを切らさない
仕訳から財務諸表へのつながり
日商簿記2級の仕訳から財務諸表へのつながり。取引の増減、仕訳、決算整理、財務諸表への反映を順に追い、処理のつながりを確認する。
- 取引を分解する固定資産の売却など、何が増減し、現金・債権・損益のどれに関係するか確認する。
- 仕訳にする使う勘定科目と金額を決め、借方と貸方の合計が一致するか確認する。
- 決算整理を反映する減価償却・引当金・税金などの整理を加え、決算時点の残高を求める。
- 財務諸表へつなぐ収益・費用は損益計算書、資産・負債・純資産は貸借対照表へ振り分ける。
2級では仕訳そのものが難しくなるだけでなく、仕訳結果を財務諸表へ反映する力が必要です。
固定資産、引当金、税金、株主資本なども、「仕訳を1個覚える」で終わらせず、
- 何が増減したか
- どの勘定科目を使うか
- 損益計算書・貸借対照表のどこへ行くか
まで追います。
ミニケース:固定資産を売却した
帳簿価額800,000円の備品を700,000円で売却した場合、単に現金が増えるだけではありません。
帳簿価額と売却額との差100,000円が損失になります。
以下は、減価償却を直接法で記帳し、売却代金を現金で受け取った例です。間接法の場合は、取得原価と減価償却累計額を取り崩して売却損益を求めます。
借方 現金 700,000
借方 固定資産売却損 100,000
貸方 備品 800,000
このように、取引→差額→損益まで一つの流れで考えます。
連結会計は「会社を一つとして見る」から始める
連結会計は、仕訳を丸暗記すると混乱しやすい論点です。
最初に理解したいのは、親会社と子会社を別会社として見るのではなく、企業グループ全体を一つの会社のように表示するという目的です。
そのため、グループ内部の取引や債権債務は、連結上は消去します。
たとえば親会社から子会社への売掛金と、子会社から親会社への買掛金は、グループ全体から見れば内部の関係です。
連結問題では、
- 取得時の処理
- 投資と資本の相殺
- 内部取引の消去
- 未実現利益
- 非支配株主持分
などが出てきますが、最初に「なぜ消すのか」を理解してから仕訳へ進む方が安定します。
工業簿記は「原価がどこへ移動するか」を図で追う
工業簿記で最も大切なのは、費用の名前を覚えることではありません。
材料費・労務費・経費が製造活動へ入り、仕掛品から製品へ移り、売れた分が売上原価になる流れを理解します。
製造原価の流れ
日商簿記2級の製造原価の流れ。材料費・労務費・経費が仕掛品、製品、売上原価へ移る流れ。未完成品と未販売品は在庫に残る。
- 材料費・労務費・経費直接費は製造対象へ直接集計し、製造間接費は配賦して製品原価へ含める。
- 仕掛品製造中の原価を集める。完成していない分は月末仕掛品として残る。
- 製品完成した分の原価を仕掛品から製品へ振り替える。未販売分は在庫として残る。
- 売上原価売れた製品の原価を売上原価へ振り替え、売上高に対応させる。
大きな流れは、
材料・労務・経費 → 仕掛品 → 製品 → 売上原価
です。
この流れが頭にあると、「この原価はどこへ集めるか」を判断しやすくなります。
個別原価計算は「どの製品に使ったか」を追う
個別原価計算では、製造指図書などを使って製品や仕事ごとに原価を集計します。
見るべきなのは、
- 直接材料費
- 直接労務費
- 製造間接費
です。
製造間接費は直接追えないため、一定の基準で配賦します。
配賦率だけを覚えるのではなく、
製造間接費 ÷ 配賦基準の合計
で率を求め、
配賦率 × 各製品の基準量
で各製品へ配る流れを理解します。
総合原価計算は「完成品と仕掛品へどう分けるか」が中心
同じ製品を連続生産する総合原価計算では、期間中に投入した原価を完成品と月末仕掛品へ分けます。
ここで重要なのが加工進捗度です。
材料が最初に全量投入される場合と、加工費が進捗に応じて発生する場合では、完成品換算量の考え方が違います。
総合原価計算の4ステップ
日商簿記2級の総合原価計算の4ステップ。総合原価計算は数量、完成品換算量、単位原価、完成品と月末仕掛品への配分の順で進める。
- 数量を整理する月初仕掛品・当月投入・完成品・月末仕掛品の数量を整理する。
- 完成品換算量を求める材料の投入時点と加工進捗度を確認し、材料費と加工費を分けて考える。
- 単位原価を求める平均法・先入先出法など指定された方法に従い、対象原価と対象数量を対応させる。
- 完成品と月末へ配分する完成品原価と月末仕掛品原価を求め、配分前後の原価合計を確認する。
計算するときは、
- 数量を整理
- 完成品換算量を求める
- 単位原価を求める
- 完成品と月末仕掛品へ配分
の順番を固定します。
標準原価計算は「差異がなぜ出たか」を分解する
標準原価計算では、実際原価と標準原価の差を見るだけでは足りません。
材料なら、
- 価格の差
- 使用量の差
労務費なら、
- 賃率の差
- 作業時間の差
などに分けます。
差異分析では符号だけを暗記するより、
単価が高かったのか、量を使いすぎたのか
という意味を言葉にしてから式へ入る方がミスを減らせます。
直接原価計算は「固定費と変動費」を分ける
CVP分析や損益分岐点では、売上高と利益の関係を考えます。
まず、
- 変動費
- 固定費
- 限界利益
を分けます。
損益分岐点売上高を求める場合でも、公式だけ覚えるのではなく、
限界利益で固定費を回収し、残りが利益になる
という構造を理解します。
数字が変わっても、この関係が分かっていれば式を作り直せます。
90分は「工業簿記で安定点を確保してから重い商業簿記へ」
90分で合格点を確保する順番
日商簿記2級の90分で合格点を確保する順番。90分の中で取れる仕訳と工業簿記を確保し、重い商業簿記へ戻ってから入力を見直す戦略の例。
- 取れる仕訳を先に問題を見渡し、すぐ判断できる仕訳から得点する。解答順は自分の得意分野に合わせる。
- 工業簿記の安定点手順が固まった原価計算を解き、途中数値を残して転記ミスを防ぐ。
- 重い商業簿記へ戻る連結や決算整理は解ける箇所を確保する。一つの不一致に時間を使い切らない。
- 入力と未回答を確認見直し時間を残し、勘定科目・金額・入力欄を確認する。90分演習で配分を調整する。
簿記2級では、すべてを最初から順番に解く必要はありません。
本番では問題を見て、
- すぐ取れる仕訳
- 手順が固まっている工業簿記
- 時間がかかりそうな商業簿記
- 最後に戻る問題
へ分けます。
工業簿記が得意なら、先に安定点を確保する戦略も有効です。
逆に、連結や決算問題で一つの数字が合わなくても、その大問へ90分の大部分を使ってはいけません。
ネット試験では「途中計算を手元に残す」
ネット試験では答案画面へ入力しますが、計算そのものを頭の中だけで行う必要はありません。
特に工業簿記は、
- 配賦率
- 完成品換算量
- 単位原価
- 差異
- 限界利益率
など途中数値を使い回します。
計算用紙へ途中値を整理し、画面へ転記するときの入力ミスを減らします。
最終入力だけ見て誤りを探すより、途中値を残しておく方が修正しやすくなります。
ミスは「商業簿記が苦手」「工業簿記が苦手」で終わらせない
復習では原因をさらに分けます。
商業簿記
- 仕訳判断
- 決算整理
- 連結処理
- 財務諸表への振り分け
- 集計ミス
工業簿記
- 原価分類
- 配賦
- 完成品換算量
- 差異分析
- CVP
- 計算ミス
同じ分野を何度も読み直すより、どの処理で崩れたかを特定して戻ります。
4週間で仕上げるなら「商業・工業を毎週並行する」
1週目:3級論点の確認 + 工業簿記の原価の流れ
借方・貸方や基本仕訳に不安があれば先に補修します。
同時に材料・労務・経費から製品原価になる流れを学びます。
2週目:商業簿記の2級論点 + 個別・総合原価計算
固定資産、引当金、税金、株主資本などを進めつつ、工業簿記の基本計算を反復します。
3週目:連結会計 + 標準原価・直接原価
重い論点を集中的に扱います。
この段階から90分の総合問題も始めます。
4週目:90分演習 + 原因別復習
点数だけを見るのではなく、どの大問で時間を失ったか、どの途中計算が崩れたかを確認します。
商業・工業を並行する4週間ルート
日商簿記2級の商業・工業を並行する4週間ルート。毎週商業簿記と工業簿記を並行する4週間の仕上げ例。理解度に応じて各段階の期間を延ばす。
- 1週目:基礎と原価の流れ3級の仕訳を補修し、材料費・労務費・経費から製品原価になる流れを学ぶ。
- 2週目:2級論点と基本計算固定資産・引当金・税金・株主資本と、個別・総合原価計算を並行する。
- 3週目:連結と差異・CVP連結会計、標準原価計算、直接原価計算を練習し、90分の総合問題を始める。
- 4週目:90分演習と復習時間を失った大問と崩れた途中計算を特定し、論点別演習へ戻って再確認する。
資格合格.webでは「論点別→大問→90分」の三段階で進める
2級は、いきなり90分の総合問題を繰り返しても効率が悪い場合があります。
おすすめは、
- 論点別教材で仕組みを理解
- 短い計算・仕訳で確認
- 一つの大問として解く
- 商業・工業を混ぜる
- 最後に90分で通す
という流れです。
特に工業簿記は、途中計算の意味が分かるまでは小さい問題で手順を固め、最後に大問へ広げます。
試験直前は「苦手論点を増やす」のではなく「70点の取り方」を固める
直前期に優先したいのは、
- 連結で繰り返し間違える消去仕訳
- 決算整理
- 固定資産・引当金
- 個別原価計算
- 総合原価計算
- 標準原価計算
- CVP
- 工業簿記の途中計算
- ネット試験の入力ミス
- 90分演習で時間を使いすぎた大問
です。
新しい難問へ広げるより、自分が取りに行く70点を安定させることを優先します。
受験前には最新の実施情報を確認する
日商簿記2級は、統一試験とネット試験で実施されています。
試験時間は90分、商業簿記・工業簿記が出題され、合格基準は70%以上です。
2026年度の受験料は5,500円(税込)です。
統一試験は2026年11月15日、次回は2027年2月28日の実施予定が確認できます。ネット試験は各会場で実施されます。
申込日程・会場・施行休止期間は変わる可能性があるため、受験前には日本商工会議所の最新案内を確認してください。
このガイドを読み終えたら
3級の仕訳に不安があるなら、商業簿記2級へ進む前に基礎仕訳を補修します。
工業簿記が初めてなら、公式暗記より「材料→仕掛品→製品→売上原価」の流れから始めます。
論点別では解けるのに総合問題で崩れるなら、大問単位の練習へ移ります。
最後は90分で商業簿記と工業簿記を通し、自分がどの順番なら70点を安定して回収できるかを固めます。
簿記2級で目指すのは、すべての難問を完璧に解く状態ではありません。
商業簿記と工業簿記の処理手順を理解し、重い問題で止まりすぎず、90分の中で合格点を再現できる状態です。