RTO・RPOとバックアップ設計の違いと使い分け

RTOとRPOを混同すると、正しい問題へ投資できません。停止時間とデータ損失の二軸で結果を分類し、事前稼働・バックアップ頻度・保持の効果を比較します。

この単元で学ぶこと

  • 二つの目標の達否を別々に判定する
  • 改善策が作用する対象を区別する
  • 方式・費用・保護範囲を比較する

本文解説

1. 二軸の評価 RTO30分、RPO5分の業務で、10分で復旧してもデータが1時間前ならRTOだけ達成です。40分かかっても直前1分の状態を戻せればRPOだけ達成です。両方を満たして初めてこの二つの復旧目標を達成したといえます。片方の良い結果で他方の超過を相殺しません。

2. 待機と保存の違い アプリを待機系で稼働させると、障害後の起動待ちや環境構築を減らせます。一方、待機アプリへ渡すデータが昨日のままならRPOは改善しません。バックアップ頻度を増やすと細かい復旧点を用意できますが、巨大データの復元時間を自動的にゼロにはできません。

3. 頻度と保持の違い RPOを短くしたいときは、データ変更をどの頻度・遅延で安全な場所へ送るかを見ます。数週間前の誤操作へ戻りたいときは保持期間を見ます。保存年数が長いことと、障害直前までのデータが戻ることは別です。目的により同じバックアップ設定でも変更箇所が異なります。

4. レプリカとバックアップ レプリカは稼働を引き継ぐための最新状態に近いコピーとして役立ちます。バックアップは保存時点への復旧に役立ちます。レプリカが誤更新を反映すると過去の正常状態が必要になるため、両者は単純な代替関係ではありません。高可用性の構成にも過去保護を加えます。

5. 方式の選び方 バックアップと復元、パイロットライト、ウォームスタンバイ、アクティブ/アクティブは平常時の準備量が違います。一般に準備を多くすると切替を速くしやすい一方、費用や整合性管理が増えます。方式名から固定のRTO・RPOを決め付けず、データ量と依存先を含む実装で検証します。

6. 障害の種類 リージョン障害と誤削除では効果のある保護が異なります。別リージョンへのコピーは拠点障害に役立ちますが、同じ権限で全コピーを削除できるなら権限事故には弱いままです。保存先の地理的分離と、アクセスや保管の分離を別の軸として比較します。

7. 数値例の比較 目標がRTO30分・RPO10分で、案Aが停止20分・損失15分ならAはRPO未達です。案Bが停止35分・損失5分ならBはRTO未達です。Aは復旧点の新しさ、Bは復旧工程の時間が主な改善点になります。単に合計35分対40分でAが優れるとは判断しません。

8. 合格条件を揃える 比較する案では同じ障害事象、同じデータ量、同じ業務完了条件を使います。片方はEC2起動、片方は注文成功まで測ると公平に比較できません。訓練の費用や運用負担、目標に対する余裕も含め、二つの目標を満たす現実的な案を選びます。

図解

片方だけ達成する例
案Aは復旧点、案Bは復旧工程を主に改善します。数値の合計では評価しません。

重要ポイント

  • 片方の目標達成で他方の超過は相殺できない
  • 頻度・保持・起動準備・権限分離の効果を区別する
  • 同じ条件と完了定義で方式を比較する

間違えやすい点

  • 停止分数と損失分数を合算して方式を順位付けしない
  • 古いデータの高速起動を完全な復旧と呼ばない
  • レプリカと過去時点の保存を同じ機能と考えない

用語解説

目標達成判定
実際の停止時間とデータ損失をそれぞれの上限へ照合すること。
待機環境
障害時の業務引継ぎへ備えて準備する環境。準備状態により方式が異なる。
保護範囲
AZ、リージョン、管理権限、誤操作等、どの障害から守る設計かという範囲。

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参考資料

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